Q.個人で経営している診療所の医療法人化に付随して、青色事業専従者で事務等を行っている妻が理事に就任する場合、妻は個人経営時代より多くの給与を医療法人から受け取ることができるのでしょうか?

A.青色事業専従者の妻が医療法人の理事に就任すれば、所得の区分は給与所得のままですが、経営に関与しますので、より多くの給与を医療法人から受け取ることができます。
ただし、親族への不相当に高い給与の支払いを行えば、損金に算入されない可能性も存在します。人件費は、職務や、経験年数、経営者の支払い能力、世間相場に照らして、適切なものでなければなりません。
個人経営の診療所の医療法人化には、税金面で主に次の利点があります。

1.医療法人の税金面での主要な利点
(1)高い税率の回避
所得税は超過累進税率で課税されることから、個人で診療所を経営している場合は、所得が多くなるにつれて税率が高くなり、高い所得税や住民税の納付が必要となります。しかし、医療法人化すると、所得の親族への分散ができ、税率を下げることが可能となります。
ご質問の事例については、青色事業専従者である妻が医療法人の理事に就任すると、経営の一端を担うことになりますので、より多くの給与を医療法人から受け取ることができます。そして、一般的に、院長は部分的に経営責任が軽減されると判断し、個人経営の診療所の事業所得と比べて少ない給与に抑制します。したがって、所得税の累進課税構造から考えると、家族全体の税額は少なくなり、節税効果を期待することができます。
(2)給与所得控除
個人で診療所を経営している場合は、売上から経費を差し引いた額が所得とされ、その所得に直接高い税率がかかります。しかし、医療法人を設立して、給与として医療法人から支払われた場合、給与所得控除を受けることができますので、その分だけ課税対象分が少なくなり、節税が可能です。

2.給与所得控除額
給与所得控除額の算定は、給与等の収入金額に応じた一定の算式によって行うこととされています。2013年分以降については、例えば、給与等の収入金額が1,000万円を上回り1,500万円以下である場合の給与所得控除額は収入金額×5%+170万円、収入金額が1,500万円を上回る場合の給与所得控除額は245万円の定額となっています。